自家用ダンプカーの「白ナンバー」は許可は不要?
国土交通省 令和8年2月10日事務連絡
「自家用ダンプカーの貨物自動車運送事業法における取扱いについて」解説します。
令和7年の「貨物自動車運送事業法」改正に伴い、令和8年4月より違法な白トラ行為への規制が大幅に強化されました。 建設業界において長年の慣習であった「白ナンバーの自家用ダンプ」や「一人親方への常傭依頼」は、今やコンプライアンス上の大きなリスクをはらんでいます。
「緑ナンバーは必須なのか?」「雇用契約なら本当に安全なのか?」 現場の混乱が続く中、国土交通省は令和8年2月10日、これらグレーゾーンに対する明確な指針となる事務連絡を発出しました。
今回の事務連絡は、「従前の取り扱いを変更するものではない」と明記しております。
つまり今回の趣旨は、建設現場で混乱が生じないように、自家用ダンプカー取扱いについて従来の考え方を整理・明確化したというものです。 この記事では、その内容を建設業者向けに、実務ベースでわかりやすく整理して解説します
基本のおさらい「緑ナンバー」が必要になるのはどんな場合か
まず前提として、公道を使用して貨物を運搬するうえで貨物自動車運送事業法の許可、いわゆる「緑ナンバー」が必要になるのは以下の3つの要件すべてに該当する場合です。① 他人の需要に応じ② 有償で③ 貨物の運送を事業として行う。
「他人の荷物を、報酬をもらって、事業として運ぶ」場合には、原則として緑ナンバーが必要になります。そして今回の事務連絡では、建設業において許可が不要なケースについて明確化されました。
1⃣法の許可が不要となる運送
現在の白ナンバーダンプはすべて違法なのか?
結論から言えば、そうではありません。
今回の事務連絡では、建設業において許可不要となる代表例として、主に次の2つのケースが整理されています。
1.自社の貨物を自ら運送する場合
(本文)
1.法の許可が不要となる運送
(1)建設関連会社等が自ら所有する貨物を自ら運送する場合
自ら所有する貨物を自ら運送する場合には、自社のニーズや発意に応じて運送が行われることが通常であり、運送行為の対価も発生しないことから、上記①及び②に該当せず、法の許可は不要となる。
まず典型例として示されているのが、建設関連会社等が、自ら所有する貨物を、自ら運送する場合です。
〈具体例〉
A社が土砂販売業者であり、自社が販売するために保有している土砂を、自社で運搬する場合。
この場合、運搬するのが、
正社員
パート社員
期間雇用労働者
日雇い労働者
であってもA社の従業員として運搬しているとされて、「自ら運送」と判断されます。
このケースでは、運送業許可が必要となる3要件を満たしません。
① 他人の需要に応じていない
自己所有の貨物を自ら運送しているため
② 有償性がない
従業員へ支払われるのは「運送の対価」ではなく、「労働への給与」です。
2.建設工事と密接不可分な付帯作業として運送を行う場合
(本文)
(2)建設関連会社等の生業と密接不可分であり、その業務に付帯するものとして運送を行う場合
他者が所有する貨物であっても、下記ⅰ)~ⅲ)のいずれにも該当する場合には、業としての運送を行っているとは言えず、上記②及び③に該当しないと整理できることから、法の許可は不要となる。
ⅰ)建設関連会社等の生業と密接不可分であり、その業務に付帯して行われる運送であること
ⅱ)上記ⅰ)の生業に付帯して行われる運送と認められるための具備要件として、当該生業を営む建設関連会社等が自ら運送行為を行う こと(同一の者が当該生業と当該運送行為とを一貫して行うこと)
ⅲ)名目の如何を問わず、運送行為の対価としての有償性がないこと
「生業と密接不可分な付帯作業」とは
「密接不可分」という言葉は、行政文書でもよく用いられる表現です。一般的には、二つの物事の関係が極めて強く、切り離すことができない状態を意味します。
今回のテーマである「生業と密接不可分な付帯作業」とは、建設工事と運搬行為が一体となっており、運搬だけを独立して切り離して考えることができない状態をいいます。言い換えれば、その運搬がなければ建設工事そのものが完成しない、という関係です。
建設業者の生業は、あくまで建設工事そのものです。そのため、建設工事を完成させるために必要不可欠な資材や機械の運搬については、独立した「運送事業」としてではなく、建設工事に付随する行為として評価されます。
つまり、運搬それ自体を目的としているのではなく、建設工事を遂行するための一工程として行われている場合には、「生業と密接不可分な付帯作業」として扱われるということです。
ⅰ)建設業の生業と密接不可分であること
工事を完成させるために必要な運搬であることです。
例えば、
掘削残土の搬出
資材運搬
仮置場への移動
などが典型です。
ⅱ)自ら運送行為を行っていること
建設会社自ら運送している必要があります。
この場合建設工事と運送行為は同じ者が行うということが必要になります。この同じ者という定義が「自社と雇用関係のある従業員(期間雇用又は日雇い雇用等の場合を含む)」であれば同じ者、つまり「自ら運送」している判断とされます。
ⅲ)有償性がないこと
運送業務そのものに対する対価(報酬)が存在しないことが必須条件です。
直接的な運送報酬がなくても、請負代金に運搬分を上乗せするなど実質的な有償性を帯びる場合は、違法と判断されるリスクがあります。
〈具体例〉
A社が土木工事一式を請負契約によって受注しました。
工事によって発生した残土を、工事完成のためには現場から仮置場へ運搬する必要がありました。
そこでA社は、自家用ダンプを所有する個人事業主Bと雇用契約を締結し、残土運搬を行わせました。
残土の運搬は、工事を完成させるために欠かせない作業です。つまり「生業と密接不可分な付帯作業」にあたります。この場合、緑ナンバー取得が必要となる3要件のうち、以下の②③が該当しません。
②有償性がない BはA社と雇用契約を結んだ従業員であるため、A社が「自ら運送」を行っていると判断されます。Bへの報酬は運送の対価ではなく、労働に対する給与です。
③貨物の運送を事業として行っていない 残土運搬はあくまで建設工事の一工程であり、独立した運送事業として行われているものではありません。
以上より、法の許可は不要となります。
2⃣自ら運送を行っていると認められるための具備要件
前項の1,2で許可が不要な場合に「自ら運送を行っていること」が必要ですが、「自ら」とは、会社の従業員(期間雇用又は日雇い雇用含む)とされています。この事務連絡では自家用ダンプの個人事業主も想定しておりますので、会社の社員ということだけでなく雇用関係についても明確化して整理されています。
(本文)
2.自ら運送を行っていると認められるための具備要件
上記1.(1)(2)において、建設関連会社等が自ら運送を行っていると認められるためには、当該会社等と雇用関係にある従業員たる運転者(期間雇用又は日雇い雇用等の場合を含む。)に運送行為を行わせることが必要である。
一人親方ダンプでも許可不要になる場合
今回の実務上の大きなポイントがここです。問題となるのは、一人親方や個人事業主ダンプを使う場合に、どこまで「自ら運送」と言えるのかという点です。
国土交通省は、「当該会社と雇用関係にある従業員たる運転者(期間雇用又は日雇い雇用等を含む)」であることを重視しています。つまり、個人事業主であっても、実態として雇用関係が成立していれば、“自ら運送”と評価され得るという方向性が示されたわけです。
(本文)
雇用関係があるか否かについては、契約等の形態のみならず、使用従属性等の実態も踏まえて判断されることとなる。少なくとも主な判断基準としては、
・建設関連会社等と運転者との間で労働契約が締結されているか
・運転者に対して労働条件通知書の交付がなされているか
・運転者に対する報酬が給与として支払われているか・社会保険等の加入が必要な場合に社会保険等の加入や支払い等の適切な措置が講じられているか
雇用契約の実務のうえで重要なのは「実態」
雇用関係の上で「形式上だけ雇用契約を作ればよい」という話ではないことです。行政は、契約書の名前だけではなく、実態を見ます。
・雇用契約書
・労働条件通知書の交付
・給与の支払い
・社会保険加入が必要な場合の措置
これらの書類・手続きを適正に整備・実施することが必要です。
実際に自家用ダンプの個人事業主との雇用契約を締結して運用する場合には、運輸支局・労働局へ自社の具体的なケースを事前に相談、必要な措置の確認を行う方が良いでしょう。
(本文)
・運転者が持ち込む自家用ダンプカーを使用する場合、運転者と建設関連会社等との間で、当該車両の業務上使用契約書の締結等の適切な措置が講じられているか
・運転者が当該建設関連会社等の指揮命令下にあるか
等があるが、労働契約や労働条件通知書等に関する詳細は、最寄りの労働局・労働基準監督署にご確認いただきたい。
車両は個人所有でもよいのか
今回の整理では、ダンプ車両自体は個人事業主所有で建設会社が業務上使用契約を締結し使用料を支払うという形も想定されています。
ただし、ここには非常に重要な論点があります。
「車両使用料」が実質的な運送対価になると危険
例えば、車両使用料が実態上の運送対価となっているなど独立事業者性が強いと認められる場合は、実質的な有償運送と判断されるリスクがあります。
つまり、「給与」と言いながら、実態は運送請負と評価されれば、貨物自動車運送事業法違反につながる可能性があります。
運転者が雇用主の指揮命令下にあるか
使用従属性が認められるには、請負契約とは反対に、運転者が建設会社(雇用主)の指揮命令下に置かれる必要があります。運転者は請負でなく、雇用契約の労働者ということになります。
社会保険にも注意が必要
雇用契約を締結する以上、社会保険の問題も避けて通れません。勤務日数や所定労働時間によっては、会社側に社会保険加入義務が発生する場合があります。今回の事務連絡でも、必要な場合には適切に加入措置を行うことが前提とされています。
今回の事務連絡のまとめ
今回の事務連絡は「従前の取扱いを変更するものではない」としながらも、建設業界で長年グレーゾーンとされてきた白ナンバーダンプの運用に、一定の明確な指針を示した点で大きな意義があります。
特に注目すべきは、一人親方や個人事業主であっても、実態を伴った雇用関係が成立していれば「自ら運送」に該当し得るという方向性が示されたことです。その一方で、請負契約・常用契約・運搬対価性の強い支払形態については、実質的な運送事業と判断されるリスクがより明確になりました。
問題は、実際の建設現場でこの基準を満たせているかどうかです。白ナンバー運用を適法に続けるためには、以下の管理体制を整える必要があります。
- 雇用契約書・労働条件通知書の整備
- 給与としての報酬支払い
- 社会保険の適切な加入
- 指揮命令体制の明確化
今後は、現在の運用が上記の要件を満たしているかを改めて点検し、白ナンバーのまま適法に整備するのか、緑ナンバー取得に切り替えるのか、自社の実態に即した判断が求められます。法令遵守への対応は、もはや先送りできない経営課題といえるでしょう。

