Gマーク申請を分かりやすく解説(2025年版)

目次

Gマーク(安全性優良事業所認定制度)とは

Gマーク取得のメリット

法に基づく許可申請、届出、報告事項・社会保険等への加入要件

Gマーク申請資格の4要件

Gマークの評価項目

申請手続から認定までのフロー

Gマーク申請のポイント

Gマーク(安全性優良事業所認定制度)とは

Gマークとは、 全日本トラック協会が実施する「安全性優良事業所認定制度」のことを指します。安全・安心な輸送サービスを提供している事業所を認定する制度で、認定された事業所は「Gマーク」のロゴマークを営業車などに掲示することができます。

この制度は、全国約6万事業所のうち、安全性に特に優れた事業所のみが認定されるもので、荷主企業や取引先からの信頼性向上、従業員の意識向上、交通事故防止といった効果が期待されています。

Gマーク取得のメリット

~安全性と信頼の“証”がもたらす6つの効果~

Gマーク(安全性優良事業所認定制度)は、運送会社が安全管理体制を整え、コンプライアンスを重視していることを「見える化」する制度です。取得によって得られるメリットは、対外的な信頼だけでなく、社内体制の改善や経営面の優遇にもつながります。

1. 荷主・取引先からの信頼向上

Gマークは、第三者機関によって「安全性が高い」と認定された証です。荷主や元請け企業からの信頼性が高まり、新規契約の獲得や既存取引の継続に有利に働くことがあります。


2. 入札・契約における加点や優遇

一部の自治体や行政機関では、Gマーク認定事業所を入札の加点対象としているほか、元請企業でも「Gマーク取得が下請要件」となることがあります。特に公共輸送や定期便契約での評価が高まります。


3. 各種助成金・補助制度の対象

Gマーク取得事業所は、以下のようなインセンティブ(優遇措置)を受けられる場合があります(※実施内容は各都道府県トラック協会によって異なります):

・安全機器(ドライブレコーダー、デジタコ等)の導入補助

・点呼支援機器やIT点呼の導入支援

・安全装置付き車両の導入補助

・健康診断や睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策の費用補助

・事故削減努力事業への支援制度 など

取得済事業所のみが対象となる制度も多くあります。


4. 社内体制の見直しと安全管理の向上

Gマーク取得の過程で、運転者台帳・点呼記録・運行管理体制などの整備が求められます。そのため、社内の安全体制やコンプライアンス体制が強化される結果となり、事故の防止・業務改善にもつながります。


5. 採用・人材確保に有利

「安全・安心な事業所」というイメージは、求職者にとっても魅力となり、特に若手や家族持ちのドライバーに対して安心材料となります。Gマーク取得は、人材確保においても強力なアピール要素です。

また、特定技能外国人の受け入れ対象に「自動車運送業」が追加されましたが、受け入れ機関(所属機関)となるには、Gマークの取得が要件の一つとして定められています。


6. 巡回指導・監査への備えになる

Gマークの評価項目は、国土交通省が行う巡回指導の内容と多くが重なっており、Gマーク取得の準備はそのまま監査・指導への備えとなります。定期的に社内を見直す習慣が根付き、法令違反リスクの低減にもつながります。

法に基づく許可申請、届出、報告事項・社会保険等への加入の要件

~申請前に確認される「基礎要件」とは?~

Gマーク(安全性優良事業所認定)の申請にあたっては、書類の整備だけでなく、事業者としての法令遵守状況が一定の水準を満たしていることが求められます。
特に、以下の2点については、「認定申請の前提条件(基礎要件)」として位置づけられています。

【1】法に基づく許可申請・届出・報告の適正な履行
・事業者は、貨物自動車運送事業法などに基づく以下の義務を適切に履行している必要があります。
・営業所・車庫・車両・役員変更などの届出・認可申請
・事業報告書・運賃変更などの報告事項
・点呼や記録管理に関する行政指導事項の遵守
これらの事項に未届出・虚偽記載・無認可運営等がある場合は、申請自体が不可となることがあります。
【2】社会保険等への適正な加入
Gマークの申請にあたっては、以下の保険制度に事業所として適切に加入しているかが確認されます。
健康保険・厚生年金保険
雇用保険
労災保険
いずれかの保険に加入していない、または未加入の従業員がいる場合は、改善報告書の提出や申請不可となることがあります。
近年は、行政全体として「社会保険未加入事業者の排除」が進んでおり、Gマークにおいてもその方針が反映されています。
【重要】申請前に改善報告書の提出が必要なケースも

上記いずれかに問題がある場合は、申請前に「改善報告書(様式あり)」を提出し、是正措置を講じた上で申請が認められる**場合もあります。
ただし、一定期間に複数回の違反歴や指導歴がある場合は、申請不可や認定取消しの対象となる可能性もあるため、十分な注意が必要です。

Gマーク申請資格の4要件

Gマーク4要件内容
事業開始後3年以上経過していること申請する事業所が、営業開始から3年以上経過している必要があります。
事業用自動車を5両以上保有していること申請事業所が保有する事業用自動車の台数が5両以上であることが求められます。
過去の不正申請等に関する一定期間の経過過去に虚偽の申請や不正な手段により申請の却下または評価の取消しを受けた場合、当該却下または取消しに係る申請年度後2事業年度を経過していること。
認定証、認定マーク及び認定ステッカー等の偽造もしくは変造、または不正な使用により是正勧告を受けた場合、当該是正勧告の履行状況が確認され、及び偽変造等に係る認定証等の提出を受けた日後3年を経過していること。
法令に基づく適正な手続きと社会保険等への加入貨物自動車運送事業法等に基づく認可申請、届出、報告事項が適正に行われていること。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの社会保険等への加入が適正に行われていること。
これらの要件を満たした上で、Gマークの評価項目において所定の基準点数をクリアすることが必要です。


Gマークの評価項目

Gマークの認定要件

①評価項目(100点)の評価点数の合計点が80点以上であること。

②評価項目は3つに分かれておりそれぞれ基準点数を満たす必要があります。

評価項目配点基準点(足切り)
Ⅰ.安全性に対する法令の遵守状況40点32点
Ⅱ.事故や違反の状況40点21点
Ⅲ.安全に対する取組の積極性20点12点
自認項目グループ1.運転者等の指導・教育1点
自認項目グループ2.輸送の安全に関する会議・QC活動の実施2点
自認項目グループ3.法定基準を上回る対策の実施1点
自認項目グループ4.その他の取組み1点

 

【Ⅰ】安全性に対する法令の遵守状況(配点:40点/基準点:32点)

この項目では、地方実施機関による巡回指導の結果に基づき、以下の25項目が評価されます。

評価は2024年7月1日~2025年10月31日の期間の巡回指導の結果が点数なります。


分類評価項目配点
1.事業計画等乗務員の休憩・睡眠施設の保守、管理は適正か1
2.帳票類の整備、報告等事故記録が適正に記録され、保存されているか1
運転者台帳が適正に記入等され、保存されているか1
車両台帳が整備され、適正に記入等されているか1
3.運行管理等運行管理規程が定められているか1
運行管理者に所定の講習を受けさせているか1
事業計画に従い、必要な運転者を確保しているか1
過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか3
過積載による運送を行っていないか3
点呼の実施及びその記録、保存は適正か3
乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か1
運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か1
運行指示書の作成、指示、携行、保存は適正か1
乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか3
特定の運転者に対して特別な指導を行っているか2
特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか2
4.車両管理等整備管理規程が定められているか1
整備管理者に所定の研修を受けさせているか1
日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか1
定期点検基準を作成し、これに基づき、適正に点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されているか3
5.労働基準法等就業規則が制定され、届出されているか1
36協定が締結され、届出されているか1
労働時間、休日労働について違法性はないか(運転時間を除く)1
所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされているか3
6.運輸安全マネジメント運輸安全マネジメントを的確に実施し、輸送の安全に関する計画の作成、実行、評価及び改善の一連の過程を円滑に進めているか2

備考:

各項目の評価は、巡回指導結果が「適」の場合に加点、「否」の場合は加点されません。

巡回指導後に改善されても加点されません。

事業所により該当しない項目がある場合、当該項目は加点されます。

巡回指導時に書類不備等により判定できなかった項目は加点されません。

.事故や違反の状況(配点:40点、基準点:21点)

事故の実績(20点)2025年11月30日から過去3年間における有責事故の第一当事者となる、自動車事故報告規則第2条各号に定める事故の有無。
有責事故がない場合:20点
有責事故がある場合:0点
違反(行政処分)の実績(20点)2025年11月30日において、事業所に、貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の点数が付加されていないか。また、点数がある場合には、当該時両所に係る行政処分の累積点数は何点か。
行政処分の累積点数がなし:20点
累積点数がある場合:20点から累積点数を減点
累積点数が20点以上:0点

Ⅲ.安全性に対する取組の積極性(配点:20点、基準点:12点)

この項目は、以下の4つのグループに分かれた18の自認項目から構成されます。各グループから少なくとも1項目以上の得点が必要です。

分類評価項目配点
グループ1:運転者等の指導・教育自社内独自の運転者研修等の実施(50%未満は1点)3⑴
外部の研修機関・研修会への運転者等の派遣(選任運転者等以外は1点)3⑴
定期的な運転記録証明書の入手と指導の実施3
省エネ運転の実施と個別指導教育の実施3
グループ2:輸送の安全に関する会議・QC活動の実施事業所内での安全対策会議の定期的な実施2
事業所内での安全に関するQC活動の定期的な実施2
荷主企業、協力会社等との安全対策会議の定期的な実施2
交通事故防止や輸送の安全に対する意識向上の取組の実施2
グループ3:法定基準を上回る対策の実施特定運転者以外の運転者への計画的な適性診断の実施2
健康起因事故防止対策の実施2
車両の安全性を向上させる装置の装着(一部装置は1点)2⑴
ドライバー時間外労働時間短縮の取組の実施2
グループ4:その他健康起因事故防止に向けた取組1
輸送に係る安全や環境に関する認証や認定の取得1
国が認定する第三者機関による運輸安全マネジメント評価の受審1
過去3年間以内の行政、外部機関、トラック協会による輸送の安全に関する表彰の実績1
リアルタイムGPS運行管理システムなどの先進的運行管理システムの導入1
自社内独自の無事故運転者表彰制度または省エネ運転認定制度の活用1

注:各グループから少なくとも1項目以上の得点が必要です。

参考:2025年度 Gマーク申請案内(全日本トラック協会)

申請手続から認定までのフロー

法に基づく許可申請、届出、報告事項が適正になされているか。

9項目に関して適正になされているか、1つでも適正でない場合申請出来ません。

STEP
1

社会保険等への加入が適正になされているか。

労災保険、雇用保険、社会保険、厚生年金が適正に加入されて、納入されているか。

STEP
2

申請資格要件を満たしているか。

申請日基準日(2025年7月1日)現在で①事業開始後3年経過②車両数5台以上③虚偽、不正を受けて取消の場合2年経過④認定証、マークの偽造等改善から3年経過、の要件があります。

STEP
3

自認事項を証する書類の準備(新規A・Cのみ)

役職員名簿等、自認書の作成。

STEP
4

Web申請システムにより申請

2025年7月1日~14日の間にWeb申請システムで申請する。提出用申請書、提出用自認書、挙証資料を窓口へ持参または郵送(7月14日必着)で地方実施機関へ提出する。

STEP
5

申請の受理

申請受付完了メールを受信、控えを保存する。

STEP
6

巡回指導(新規、更新A・Cのみ)

Ⅰ安全性に対する法令の遵守状況については、地方適正化事業機関の巡回監査の結果が評点となる。

STEP
7

認定要件に係る改善報告期限

巡回指導の際に、認定要件「法に基づく認可申請、届出、報告事項」及び「社会保険等の加入」のいずれかについて改善報告を求めらた場合には期日までに改善報告をする。申請基準日以前の巡回指導⇒2025年7月末日まで、申請基準日以降の巡回指導⇒巡回指導実施日から1ヶ月以内

改善基準報告期限内に改善報告がない場合は、Gマーク認定はされません。

STEP
8

評価の実施

全国実施機関にて「巡回指導の結果」、「国土交通省~提出される事故や違反の実績」「申請書類の自認事項を証する書類」に基づき、評価。

認定要件に満たした事業所は、安全憂慮事業所として認定されます。

STEP
9

評価結果の通知

全国実施機関より、当該事業所へ評価結果の通知。(2025年12月中旬)

認定証が授与されます。

STEP
10

安全性優良事業所の公表

全日本トラック協会のホームページに安全性優良事業所として掲載されます。

STEP
11

Gマーク申請のポイント

Gマーク取得のためには、単に帳票をそろえるだけでなく、社内体制全体が「安全」と「法令遵守」を軸に構築されていることが重要です。特に次の3点が合否を左右するポイントとなります。

① 書類の整備と一貫性
点呼記録、日報、事故記録など、各帳票に矛盾がないことが求められます。たとえば、乗務時間と点呼時間が整合していないと、評価が下がる場合もあります。

② 社内の安全管理体制
安全教育や研修記録、運行管理者の役割が形だけになっていないか。実際に社内で運用されている証拠が必要です。

③ 巡回指導への対応力
トラック協会による巡回指導での評価が、申請結果に直結します。改善報告が必要になるケースもあるため、事前の準備が不可欠です。

当事務所では、運送業出身の行政書士が現場目線での対策支援を行っており、単なる申請代行ではない「結果にこだわるサポート」を提供しています。