巡回指導項目別解説 第6回 「運行管理規定」

”現場で使える”  巡回指導項目別解説 第6回 「運行管理規定」

最新の法律に反映が必要「運行管理規定」

貨物自動車運送事業を営む事業者には、「運行管理規定」の作成・整備が義務づけられています。この規定は、輸送の安全確保に不可欠な社内ルールであり、国土交通省令「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第21条に基づき、事業者が遵守すべき重要な法的要件です。

法令の確認:貨物自動車運送事業輸送安全規則21条(運行管理規定)

一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者の職務及び権限、統括運行管理者を選任しなければならない営業所にあってはその職務及び権限並びに事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務の処理基準に関する規程(以下「運行管理規程」という。)を定めなければならない。
2 前項の運行管理規程に定める運行管理者の権限は、少なくとも前条に規定する業務を処理するに足りるものでなければならない。

運行管理規定の法的根拠

「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第21条は、運送事業者に対して以下のような社内規定の整備を求めています。

  • 運行管理者の職務内容と権限
  • 点呼の実施方法
  • 運転者の乗務割の作成手順
  • 過労運転の防止策
  • 健康状態の確認方法
  • 運転者教育の実施体制
  • 運行記録等の保存期間と管理方法

このように、運行管理規定は単なる書面の提出物ではなく、実際の業務に即した安全管理体制を反映したものでなければなりません。

法改正には即時対応を

運行管理規定は、一度作成したら終わりではありません。道路交通法や輸送安全規則等の改正があった場合は、最新の法令に沿った内容へ随時見直し・改訂を行う必要があります。

実際に、2024年以降も働き方改革関連法の適用や拘束時間の制限見直し等、運行管理体制に影響する法改正が相次いでおり、常にアップデートされた規定であることが求められます

巡回指導で見られるポイント

運送会社には、地方運輸局やトラック協会等による**巡回指導(法令遵守状況のチェック)**が行われます。運行管理規定に関しては、以下のような観点から確認がなされます。

  • 運行管理者の職務権限が明確になっているか
  • 最新の法改正を反映しているか
  • 実務と規定の内容が乖離していないか
  • 現場での運用状況と一致しているか

不備がある場合には是正指導や改善報告書の提出が求められ、悪質な場合には行政処分に発展することもあります。

IT点呼・遠隔点呼を実施している場合は、専用の規定も必要です

近年、**人手不足や業務効率化の観点から「IT点呼」「遠隔点呼」**を導入する事業者が増えています。これらの点呼方式は、一定の条件を満たす場合に限り、国土交通省の認可を受けて実施可能とされています。

■ 点呼方式ごとの規定が必要

IT点呼や遠隔点呼を実施している事業所では、通常の運行管理規定とは別に、点呼の実施方法や記録内容、システム要件などに関する専用の規定を設ける必要があります。

国土交通省およびトラック協会では、通常点呼用とIT点呼・遠隔点呼用のそれぞれのひな形を公開しており、これをもとに運用に合わせた規定を整備することが推奨されています。

■ 例:遠隔点呼規定で求められる主な内容

  • 遠隔点呼実施の対象拠点および対象運転者
  • 使用する通信機器の種類と要件(双方向通信、録画保存など)
  • 点呼実施者の資格(運行管理者に限定)
  • 点呼記録の方法および保存期間
  • 機器故障時の対応方法

■ 巡回指導では確認されるポイント

巡回指導や監査では、遠隔点呼の導入届や実施報告書のほかに、**「遠隔点呼に対応した運行管理規定が整備されているか」**も確認対象になります。不備がある場合には改善指導の対象となるため、注意が必要です。

トラック協会や国交省のひな形の活用

各都道府県トラック協会や国土交通省では、運行管理規定の**標準的なひな形(モデル様式)**を公表しています。これらをベースに、自社の運用実態に合わせてカスタマイズすることが可能です。

ただし、ひな形のままでは自社の業態に合わないケースも多く、形式的に整っていても、実際の巡回指導では「中身」が問われます。