運転者台帳は、貨物自動車運送事業における選任運転者の乗務に関する重要な情報を記録する帳簿です。事業者には、この運転者台帳を作成し、適切に保管する義務があり、その根拠は「貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条第5項」に定められています。 巡回指導では、これらの項目が正しく記載されているかどうかが重点的に確認されます。
法令の確認:貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の5
「一般貨物自動車運送事業者等は、運転者等ごとに、第一号から第九号までに掲げる事項を記載し、かつ、第十号に掲げる写真を貼り付けた一定の様式の運転者等台帳を作成し、これを当該運転者等の属する営業所に備えて置かなければならない」作成と保管は事業者の義務です。
運転者台帳の作成・備置義務
貨物自動車運送事業者は、運転者ごとに運転者台帳を作成し、営業所に備え付けることが義務付けられています。
1.作成時期
運転者を新たに雇い入れた場合
運転者の属性や免許内容に変更があった場合
2.記載すべき項目
運転者台帳に記載すべき項目(貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の5)
① 作成番号及び作成年月日
② 事業者の氏名又は名称
③ 運転者等の氏名、生年月日及び住所
④ 雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日
⑤ 運転者にあっては、道路交通法に規定する運転免許に関する次の事項
イ 運転免許証又は道路交通法第九十五条の二第二項第一号に規定する免許情報記録の番号及び有効期限
ロ 運転免許の年月日及び種類
ハ 運転免許に条件が付されている場合は、当該条件
⑥ 事故を引き起こした場合は、その概要
⑦ 道路交通法第百八条の三十四の規定による通知を受けた場合は、その概要
⑧ 運転者等の健康状態
⑨ 運転者にあっては、第十条第二項の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診の状況
⑩ 運転者等台帳の作成前六月以内に撮影した単独、上三分身、無帽、正面、無背景の写真
なお、運転者が転任、退職その他の理由により運転者でなくなった場合には、直ちに、その運転者の台帳に運転者でなくなった年月日及び理由を記載し、これを3年間保存しなければなりません。
3.保存期間と場所
運転者台帳は、運転者でなくなった日から3年間、営業所において保存することが義務付けられています
4.労働者名簿との兼用活用
運転者台帳は、労働基準法で定められた労働者名簿と兼用することができます。両方の法的要件を満たす形式で作成することで、書類作成の手間を軽減できます。
労働者名簿に記載すべき内容(労働基準法107条、労働基準法施行規則53条)
① 氏名
② 生年月日及
③ 履歴
④ 性別
⑤ 住所
⑥ 従事する業務の種類
⑦ 雇入の年月日
⑧ 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)
⑨ 死亡の年月日及びその原因
ただし、常時30人未満の労働者を使用する事業においては⑥の事項は記入しません。
5.電磁的記録による作成・保存
運転者台帳は、書面による作成・保存だけでなく、電磁的記録による作成・保存も認められています。
労働者名簿についても、電磁的記録の作成・保存を行うことが認められています。
Googleスプレッドシートなどを活用し、運転者情報を一元管理する簡易的な方法でも、適性診断や健康診断の更新時期にアラートを表示させる仕組みを整えることは十分可能です。加えて、運転者台帳のクラウドサービスも複数の事業者から提供されており、費用も比較的手頃なため、特に運転者数が多く管理に手間がかかる場合には導入を検討する価値があります。
なお、巡回指導においては運転者台帳を紙で保存する必要があるかどうかは、各実施機関の判断によるため事前確認が必要です。ただし、データが即時出力可能な状態にあれば、デジタル管理でも特に問題とされないケースが多いようです。
巡回指導での対応
巡回指導での確認項目は
「運転者台帳が適正に記入等され、保存されているか」
選任運転者全員部の運転者台帳が作成され、⑴~⑽がもれなく記載され写真が添付されているか確認されます。役職者、運行管あっても、事業用自動車を運転する場合には、台帳の作成が必要です。
履歴書や労働者名簿だけでは運転者台帳の代わりにはなりません。
⑴作業番号及び作成年月日は記入されているか。
⑵事業者の氏名または名称が記入されているか。
⑶運転者の氏名、生年月日及び住所は記入されているか。
⑷雇い入れ年月日及び運転者選任年月日は記入されているか。
⑸運転免許に関する次の事項が記入されているか。
①運転免許証の番号及び有効期限
②運転免許証の年月日及び種類
③条件が付されている場合は、その条件
⑹事故を引き起こした場合、事故の概要は記入されているか。
⑺公安委員会からの道交法違反通知があった場合、違反の概要が記入されているか。
⑻運転者の健康状態が記入されているか。
⑼特定運転者である場合、特別な教育を行い、教育内容等が記入されているか。
⑽特定運転者である場合、該当する適性診断を受診し記入されているか。
⑾運転者の写真は添付されているか。(台長作成前6ヶ月以内、単独、上③分身等)
⑿転任、退勤した運転者の台帳は3年間保存されているか。
選任年月日の記載の漏れが多くあります。