【2025年施行】新物交法の基本方針とは?物流業界の“持続可能性”を守る新しいルール

2025年4月から施行される「改正物流効率化法(通称:新物交法)」は、これまで運送現場で“当たり前”とされてきた慣習を見直し、物流全体の持続可能性を守るための大改革です。 その指針となるのが、国が定めた【基本方針】です。
これにあわせて、法律の名称も「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」へと変更されました。
■ なぜ法改正?物流が限界に近づいている
物流業界は今、ドライバー不足・長時間労働・荷待ち・荷役の負担増という課題に直面しています。 特に2024年から始まったドライバーの時間外労働規制により、輸送力の低下=物流危機が懸念されています。
そこで、物流に関わるすべての事業者(荷主・物流事業者・消費者も含む)が役割を見直し、運送会社だけに頼らない仕組みづくりが求められています。
■ 物流業界が目指す2つの数値目標(令和10年度までの目標)
1. 荷待ち・荷役時間を年間125時間削減
- 5割の運行で、1運行あたりの荷待ち・荷駅頭時間を計2時間以内に削減
- 1人あたり年間125時間の削減(2019年比)
- 荷主は、原則「1回1時間以内」を目指す
2. 積載効率を全国平均44%以上へ
- 5割の車両で積載効率50%(全体の車両で積載効率44%に増加)
- 複数荷主による混載、共同配送の推進
- 容積ベースでも積載効率アップを目指す
■ 荷主・物流事業者に求められること(努力義務)
取り組み内容 | 例 |
---|---|
荷待ち時間の削減 | トラック予約システムの導入、適切な集荷時間設定 |
荷役時間の削減 | パレット化、荷捌きスペースの整備 |
積載効率の向上 | 混載・復荷・リードタイムの見直し |
契約・責任の明確化 | 附帯作業料の記載、標準的運賃の活用 |
■ 特定事業者には「義務化」も(2026年度から)
事業規模が一定以上の荷主・運送会社・物流関連業者には、以下の義務が課されます:
- 中長期計画の策定
- 物流統括管理者(CLO)の選任
- 定期報告の提出
■ 国や自治体の支援も本格化
国は以下のような支援を行います:
- デジタル化・標準化への補助(パレット、システム等)
- モーダルシフト(鉄道・海運等)の後押し
- 高度物流人材の育成支援
- サービスエリアや中継輸送拠点の整備
- 再配達削減・置き配普及など消費者向け啓発
■ 消費者にも「理解と協力」が求められる時代に
国は「送料無料」表示の見直しも含め、消費者に対しても次のような協力を呼びかけています:
- 再配達削減
- 柔軟な受け取り方法の選択
- 納品期限や返品基準の緩和理解
物流は「ドライバー任せ」ではなく、社会全体で支えるべきインフラとして、意識改革が求められています。
■ 運送会社が今すぐできる対応は?
- 荷主との契約を明文化(荷役・待機時間の対価含む)
- 積載効率や拘束時間のデータ記録と可視化
- 荷主や倉庫との改善提案と交渉の準備
■ トラック事業者の取引に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法改正)
今回の法改正では、実運送事業者が適正な対価を得るための契約ルールも強化されました。
- 無償だった長時間の荷役作業を付帯サービスとして対価を得る構造へ転換
- 荷受け、荷卸しの際に行っていた役務の内容やその対価(付帯作業料、燃料サーチャージ等を含む)について、運送契約時に書面に記載し交付することを義務付け
- 元請け事業者は、実運送事業者の名称等を記載した「実運送体制管理簿」の作成を義務付け
■ まとめ
今回の改正物流効率化法は、これまでの「運送会社任せ」の慣習を見直し、業界全体の構造を再設計しようとするものです。努力義務とはいえ、具体的な数値目標や契約ルールが明文化されたことで、荷主や物流関連事業者の責任も明確になりつつあります。
一方で、「標準的運賃」や契約内容の実効性は、依然として運送会社側の交渉力に委ねられており、行政の制度的支援や社会全体の意識改革が不可欠です。
今後は、国・自治体・消費者を含めた社会全体で物流を支える仕組みづくりが求められており、運送会社自身も法改正の内容を正しく理解し、契約や運営の在り方を見直していくことが、生き残りの鍵となるでしょう。「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」について